合魂(ガッタイ) ♯1|香月ユウ

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合魂 #1/香月ユウ

合魂 #1/香月ユウ

 入社3年目の真理は理想と現実のギャップを感じ、転職を考え始めていた。求人記事を探そうとフリーペーパーを見てみるが、希望どおりの会社は見つからない。かわりにベリーダンス教室の生徒募集記事が目にとまった。体験レッスンに参加した真理は、気さくでかわいい美奈と出会う。ふたりは周りから「双子みたい」と言われるほど体型や髪型、雰囲気までそっくり。急速に親しくなるが、美奈から悲しい過去を打ち明けられて……。魅惑的なベリーダンスを通し、惹かれ合っていく女の子同士。ソウル・メイトみたいな恋が始まる?
抄録

 ひとしきり踊って、フロアの端のテーブルで休んでいると、二人連れの男が声をかけてきた。
「よく来るの?」
「ときどき」
「君、すごいカッコよかったよ」
「ありがとう」
 こういう場所では声が聞こえにくいので、短い単語だけで会話が成り立つもののようだ。
「これからさ、僕らと一緒に遊ぼうよ」
 背の高い茶髪の男が美奈の肩を抱いて、連れて行こうとする。もう一人のニット帽を被(かぶ)った男が私に近づいて、
「ね、いいところ知ってるから」
 と耳元で話しかけてきた。
(え? これって、ナンパ? 私たちどうなっちゃうの?)
 急に怖くなって、足が震えてきた。美奈と男は、どんどん歩いて、店の外に出て行ってしまう。
「美奈ちゃん、待ってよ! 美奈ー!!」
 大声で呼んでも聞こえないのか、美奈は振り返りもしない。
「いやー、離して!!」
 私はニット帽男の手を振り払って、必死で美奈を追いかけた。

 店の外で、ようやく二人に追いついた私は、美奈の肩を馴(な)れ馴れしく抱いた茶髪の男と美奈の間に割り込んだ。
「すいません、この子を離してください」
「なんだよ、こいつがいいって言ってるんじゃん」
「困ります。私、この子を送らなきゃいけないんです」
「うるせーな。おまえは俺の連れと楽しめばいいじゃん。ほっといてくれよ」
 茶髪の男が握り拳(こぶし)を作ったのが見えた。
(殴られる!)
 思わず目をつぶって身構えたとき、
「おい、そこで何をしているんだ?」
 と言う声がして、二人の男はどこかへ逃げてしまった。
「大丈夫か? 最近、ガラの悪いのがいるから……」
「あれぇ? 西山さーん、どうしたんですかぁ?」
 美奈が少し呂律(ろれつ)の回らない口調で言う。どうやら西山さんというのは、この店のDJなどをやっていて、私たちの様子がおかしかったので、見に来てくれたようなのだ。
「美奈ちゃん、大丈夫?」
「うん。でも、私なんて、もうどうなってもいいのぉ」
 美奈は笑いながら、涙を浮かべていた。

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合魂 #1/香月ユウ
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著者プロフィール

香月 ゆう(かづき ゆう)

 フリーライターとして、ガイドブックや女性誌、単行本などで幅広いジャンルの原稿を執筆。趣味はダンス、カラオケ、散歩、旅行。恋愛に関してはオクテでロマンチスト。甘いモノも大好きですが、甘い恋の物語もたくさん綴っていきたいです。

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