危険な先輩|神崎セロリ

カテゴリ: 神崎セロリ, 作品一覧 
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危険な先輩/神崎セロリ

危険な先輩/神崎セロリ

 私は女子高のどんくさい1年生。部活は、ラクロス。1年生の憧れ、3年の国枝玲菜先輩は、スタイル抜群でファッション雑誌に読者モデルとして登場したり、おしゃれでモテモテのちょっと危険な美人。ある日、私だけが先輩の家に呼ばれた! 玲菜先輩の両親は泊まりがけで外出中、「泊まっていけばいいじゃない。今日は私に任せて」と先輩は私にお化粧をし着替えさせて街に連れ出した……。
抄録

「ね、サナエちゃん。こっちでしゃべろうよ。レオは玲菜に首ったけなんだよ。少し二人だけにさせてあげてくれないかな」
 と駿が囁《ささや》く。
 同級生の女の子たちが「駿さんってカッコいい」と言っていたのを聞いて、今まで「ちょっと女グセ悪そうで、私は嫌だな」と言っていた。しかし、近くで見ると、駿は騒がれるだけある。
 玲菜先輩は少し私の方を心配そうに見た。ここまできて玲菜先輩の邪魔をしたくない。私は駿に促されるまま、店の奥にあるボックスのソファに移った。
「なにか飲む?」
「え、何があるか分からないから……」
 じゃあ、僕が選んであげるよ、と言ったかと思うと、目の前に茶色っぽいミルク色のグラスが置かれた。飲んでみるとコーヒー牛乳みたいに甘い。
「おいしい」
「カルアミルクだよ。やっと笑ってくれたね。僕といてもつまらないのかと心配したよ」
「いえいえ、そんなめっそうもない」
「え、『めっそうもない』だって! サナエちゃん、面白いね」
 恥ずかしくって、喉《のど》が渇く。思わず、グラスを飲み干してしまった。駿の顔が目の前にある。
「君って、可愛いよ」
 ドキンとする。心臓がバクバクしている。駿みたいな男の子にそう言われて、ぼうっとならない子なんかいない。気がつくと、駿の手が私の肩に回っている。アゴに手を添えると、駿の顔が近づいてくる。キスされそう……え、どうしよう。その時、後ろから大きな声がした。
「駿! 何しているのよ。私のイトコだって言っているでしょ。この女ったらし」
 玲菜先輩は私の手をつかんで店から連れ出した。
「駄目だよ。あんな女癖の悪い男にひっかかっちゃ」
「すみません」
 だって、私、初めて可愛いって言われて……喉元まででかかった言葉がでてこない。

 玲菜先輩の部屋に戻ってくると、私は急に酔いがまわったように、ベッドにうつぶせた。
「サナエ、あんな男が好きだったの? キスしたかったの?」
 ちょっとムッとしたように玲菜先輩は言う。違う。ちょっとぼうっとしたけれど、好きだったんじゃない。初めて巻いた髪で、可愛いって言われて、ちょっとはしゃぎすぎてしまっただけ。
「違います」
 それだけ、やっと言った。
「ごめん」
 そういって玲菜先輩が私の髪を撫でる。駿の腕よりもはるかに柔らかい感触がする。
 その時唇が玲菜先輩の唇でふさがれた。唇から、首すじに先輩の唇がはう。
「あんな男にサナエが食べられちゃうんじゃないかと思って、カッとしちゃってごめん。腕、痛かったでしょ」
 一瞬体が硬くなったが、次第に力が抜けてくる。先輩の指が首すじから、腕の辺りをさする。もう一度唇がふさがれた。私は、ただなされるがままにしているだけだ。
「サナエ。その不器用なところがすごく可愛くって好きよ。ね、もしかして、ファーストキスだった?」
「……はい……」
 駿に対する感情とは違う。玲菜先輩は私の憧れだった。その先輩が今、すごく暖かい感じで近づいてくる。

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著者プロフィール

神崎 セロリ(かんざき せろり)

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