その二週間後、林間学校がはじまった。一四人いるクラスの女子は三班に分かれた。千鶴は、可もなく不可もない平凡な女の子たちの五人組。あとのふたつは、クラスから浮いている私立中学を受験する五人組と、クラスの女王様的存在、レイナを中心としたギャルっぽい女の子たちの四人組だ。もともとレイナたちは三人組で、学校に着てくる私服は上から下までジュニアブランドでばっちり決めている。ノンが転校してきてからは、そこにノンがプラスされ四人で仲良くなった。ノンはブランド物ではなく、古着を組み合わせたような格好なのだけれど、逆にそれが「オシャレ!」とレイナたちから好評だったようだ。
班が違うのでノンとはその日、とくに会話を交わすこともなく、お風呂の時間になった。お風呂は班に関係なく、クラスの女子全員で入る。生理中の子三人をのぞき、千鶴たちのクラスは一一人で入ることになった。六年生ともなると、すでに大人顔負けのナイスバディの子もいれば、まだまだ子どもみたいなからだの子もいて極端だ。背は高いけれどやせっぽちの千鶴は胸もぺったんこ。生理にもまだなっていなかった。脱衣室でいちばん最初に服を脱いで全裸になってしまった千鶴が、仲のいいカスミが脱ぐのを待っていると、
「脱いじゃったんなら早く入ろうよ、チッチ!」
いきなりノンに手を引っ張られた。
「う、うん。じゃあカッちゃん、あたし先に行ってるから」
カスミに声をかけ、ノンとふたりで浴室に入り、さっとシャワーを浴びてドボンと浴槽に入る。「ちょっとお湯ぬるいね」などと言いながら何の気なしに隣にいるノンを見た千鶴は、思わず目が釘《くぎ》付けになった。千鶴より頭ひとつ分ほど小さいのに、ノンはものすごく胸が大きい。大きくて白い胸が、ぷかりとお湯に浮いている。
「えへへ、あたし巨乳でしょ」
いたずらっぽく笑うノンに、千鶴は何も言葉を返せず、赤くなってうつむいた。
ノンとチッチ|相葉ゆら
小6の夏休み前、千鶴のクラスにノンが転校してきた。まっとうで平凡な千鶴とは何もかもが正反対のノン。小柄なのに巨乳だし、着てくるものも古着系。千鶴のことを勝手に「チッチ」と呼び、性格もひとなつこくておおらかだ。何より千鶴がびっくりしたのは林間学校のとき。いっしょにお風呂に入ると、ノンはひそかに千鶴の手をとり巨乳にさわらせてくれて、おまけに千鶴の胸にもさわってきた。中学に入ってもその出来事が頭から離れない千鶴。ある日、ノンの家庭の悪いウワサが耳に入る。一家で夜逃げしてきたとかで、ノンのおにいさんはクスリの売人をしているというのだ。
抄録
オトメ文庫 ノンとチッチ 価格 210円(税込)
著者プロフィール
相葉 ゆら(あいば ゆら)